建物の相続登記は不要?
相続登記の依頼を受け遺産調査すると、土地は被相続人名義になっているものの、建物は先代名義のままということが多々あります。
司法書士や税理士の中には、建物はいずれ取り壊されてしまうので相続登記は不要と考える方がいることも影響しているのかもしれません。
弊職も、近々取り壊しを予定している建物については「相続登記を省略し、取り壊した後、滅失登記を相続人として申請すれば良いのでは?」と提案することはあります。
しかしながら、近々取り壊しを予定していない建物については、以下のような不利益を被る虞がありますので、漏れなく相続登記を申請することをお勧めしています。
①火災保険は、火災が発生した際、保険金は契約者ではなく建物所有者に支払われますが、登記名義が先代のままだと誰が支払を受けられるか不明確になります。
※これについては相続に限らず、登記名義と真の所有者が異なるケースでは常に問題となります。
②相続登記未了の建物は相続人全員が遺産共有している体裁となりますので、建物を共有している相続人が死亡し相続税申告が必要となった際には、共有持分が相続財産とみなされる可能性があります。
上記については、相続人を確定させた遺産分割協議書を保管しておけば所有者が判明するため問題は生じないと考えることもできますが、保険会社や税務署に認めてもらうため、後日相続登記が必要となった場合には、司法書士の登記手数料が2回かかることになりますし、書類が紛失してしまうリスクもあります。
よって、弊事務所では特段の理由がない限り、登記申請の省略はしない方針とさせていただいております。
なお、借地上の建物については、借地権も随伴して承継することになるため、建物自体に価値がない場合でも、相続登記は必ず申請した方が良いでしょう。