通称名での不動産登記
通称名での不動産登記と聞くと、我々司法書士は、
「在日の外国人の方が本国名で登記するか?
住民票上の通称名で登記するか?・・・どちらも可能だが本人の希望は・・・」
という事例を思い浮かべるのですが、
今回弊事務所で扱ったのは、「日本人である被相続人の登記名義が通称名であった」
という案件です。
現行の不動産登記法上、抵当権設定、賃借権設定、所有権移転仮登記申請等の際は
住民票の添付が必要ないので、通称名で登記申請しても受理されることになります。
しかし、所有権移転登記申請の際には住所証明書(住民票等)の添付が必要となるため、
戸籍上の正式な氏名を登記するほかはありません。
※抵当権設定等の場合でも通称名で登記した場合は、その後、その登記を変更等する際、
外国人でない限り、通称名と正式な氏名の同一性を証明することが困難となるため、
そのような登記を司法書士が受任することはないと思います。
(弊事務所では添付書類でなくとも住民票をご用意いただき正式な氏名を確認させていただいております。)
さて、今回の案件は、日本人であるにも関わらず、通称名で登記された所有権でした。
婿養子に入って氏を改めたら、親族に同姓同名の方が存在したため、口約束で
異なる名前を名乗り、その名前で生涯通した! という嘘のような話。
さらに、昭和20年代に、自作農創設特別措置法による払下げで、大量に?いい加減に?
通称名で登記されてしまったもののようでした。
結果として、従前、市役所で発行された同一性を証明する書面が発見され、
法務局と打ち合わせの上、上申書を添付して無事相続登記は受理されたのですが、
司法書士として15年以上のキャリアの中で初めての経験でした。
登記は正確に手続きしないと後が大変だと実感した出来事でした。